小さなリフォームでも契約書は要ります
「500万円未満の工事なら契約書は要らない」と思われていることがありますが、これは別の決まりとの取り違えです。500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建てる工事)は、建設業法施行令第1条の2が定める「軽微な建設工事」の基準で、建設業の許可がなくても請け負える範囲を決めるものです。
契約の書面について定める建設業法第19条は、「建設工事の請負契約の当事者」すべてに書面の交付を求めており、金額による例外はありません。許可を持たずに軽微な工事だけを請け負う会社や個人事業主も、請負契約を結ぶなら同じく書面が要ります。
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会は、リフォーム向けに「住宅リフォーム工事請負契約書」と、小規模な工事向けの「住宅リフォーム工事注文書・請書」を用意しています。協議会は注文書・請書を主に「請負金額50万円未満程度かつ単一工事」用としており、それを超える工事には標準契約書を勧めています。改正建設業法の全面施行を踏まえた令和8年度版の受注は、2026年10月1日に始まっています。
また、施主の自宅など営業所以外の場所で契約を結ぶ訪問販売に当たる場合は、建設業法の書面とは別に、特定商取引法の書面も要ります。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、書面にはクーリング・オフの事項などを赤枠の中に赤字で書き、文字は8ポイント以上にします。施主は書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができます。訪問販売に当たるか、適用除外になるかは取引の形で変わるため、同ガイドで確かめてください。
500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建てる工事)は、建設業法施行令第1条の2が定める軽微な建設工事の基準で、建設業の許可がなくても請け負える範囲を決めるものです。契約の書面は建設業法第19条が定めるもので、金額による例外はなく、許可の有無にかかわらず建設工事の請負契約の当事者すべてに書面の交付を求めています。
建設業法第19条第1項の記載事項
第19条第1項は第1号から第16号までを挙げています。第4号・第5号・第10号・第13号は「定めをするときは」その内容を書く項目です。第16号は「その他国土交通省令で定める事項」で、国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」は、契約書面に書く事項を第1号から第15号までの15の事項として示しています。同ガイドラインは、第1号の工事内容について、責任を持って施工する範囲や施工条件を具体的に書き、「○○工事一式」のような曖昧な書き方は避けるべきだとしています。
| 号 | 記載事項 | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 1 | 工事内容 | 部位・仕様・数量・施工の範囲を具体的に。一式の書き方は避ける |
| 2 | 請負代金の額 | 税込・税抜の別、消費税の額 |
| 3 | 工事着手の時期及び工事完成の時期 | 着手日と完成日 |
| 4 | 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 | 日曜・祝日は休工、作業は8時から17時まで、など |
| 5 | 前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法 | 契約時・着工時・完成時の支払の割合と方法 |
| 6 | 設計変更・着手の延期・工事の中止の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め | 追加・変更工事の協議の進め方。ガイドラインはできる限り具体的に定めるのが望ましいとしている |
| 7 | 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め | 台風・地震などで工事が止まったときの扱い |
| 8 | 価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め | 資材や労務の価格が変わったときの変更の方法。ガイドラインは「協議して定める。協議に当たっては、価格等の変動の内容その他の事情等を考慮する」といった書き方を例に挙げ、「変更しない」は違反としている |
| 9 | 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め | 近隣の建物や車を傷めたときの負担 |
| 10 | 注文者が資材を提供し、又は機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め | 施主が用意する設備機器(施主支給品)の内容と受け渡し |
| 11 | 注文者が完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期 | 完成検査の日と立会い、引渡し日 |
| 12 | 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 | 引渡し後の支払期日と振込先 |
| 13 | 契約不適合責任又はその履行に関する保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 | 保証の範囲と期間、リフォーム瑕疵保険に入るか |
| 14 | 履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 | 支払や工期が遅れたときの遅延利息・違約金 |
| 15 | 契約に関する紛争の解決方法 | 協議、建設工事紛争審査会など |
| 16 | その他国土交通省令で定める事項 | ガイドラインは書く事項を1〜15号の15事項として示している |
2024年から2025年の改正で変わったこと
2024年6月14日に公布された改正建設業法(令和6年法律第49号)は、段階的に施行されました。契約書と見積に関係するのは主に次の点です。価格変動の定め(第8号)は以前から記載事項でしたが、改正で「その額の算定方法」まで定めることが明記されました。ガイドラインは、この定めを書かないことに加え、「変更しない」「変更を認めない」のように協議を前提としない定めも第19条第1項の違反になるとしています。
| 施行日 | 変わったこと | 条文 |
|---|---|---|
| 2024年12月13日 | 価格等の変動に基づく工事内容・請負代金の変更について、その額の算定方法(変更の方法)まで定めることが、契約書の記載事項として明記された | 第19条第1項第8号 |
| 2024年12月13日 | 天災その他の不可抗力による資材の供給不足や価格の高騰など、工期や請負代金に影響するおそれのある事象を、受注する建設業者が契約の前に根拠の情報とともに書面で注文者へ通知する義務。通知した事象が起きたときは、注文者は誠実に協議に応じるよう努める | 第20条の2、施行規則第13条の16・第13条の17 |
| 2025年12月12日 | 材料費・労務費などの内訳と工程ごとの日数を書いた見積書(材料費等記載見積書)を作るよう努める。見積書に書く材料費等の額は、通常必要な額を著しく下回ってはならない。注文者から求められたら契約の成立までに交付する | 第20条 |
| 2025年12月12日 | 受注する建設業者の側も、正当な理由なく通常必要な原価に満たない金額や、著しく短い工期で契約を結んではならない | 第19条の3第2項・第19条の5第2項 |
注文書・請書と電子契約の注意
注文書と請書のやり取りで契約する場合も、第19条第1項の事項がそろっている必要があります。国土交通省は一定の条件を満たす事業者どうしの継続的な取引に限って、注文書と請書への署名や記名押印を省ける場合を示していますが、その条件の一つは注文者が消費者契約法の「消費者」でないことです。個人の施主との契約では、この省略は使えません。
書面に代えて電子契約にする場合は、建設業法第19条第3項と施行令第5条の5により、あらかじめ相手方に方法の種類と内容を示して承諾を得ます。建設業法施行規則第13条の4は、書面に出力できること、改変されていないかを確かめられること、本人であることを確かめられること、という基準を定めています。
- 見積の段階で、工事内容を部位・仕様・数量で書き出す(材料費・労務費の内訳と工程の日数も添える)
- 価格や工期に影響しそうな事情があれば、契約の前に根拠とともに書面で施主に伝える
- 第19条第1項の事項(ガイドラインのいう15の事項)がそろった契約書(または注文書・請書)を作る。訪問販売に当たるなら特定商取引法の書面も用意する
- 電子契約にするなら、先に方法を示して施主の承諾をもらう
- 署名または記名押印をして、着工前に互いに交付する
- 追加・変更が出たら、着工前に変更の書面を交わす
よくある質問
500万円未満の工事なら、契約書を作らなくてもよいのですか。
いいえ。500万円は建設業の許可が要るかどうかの基準で、契約の書面の義務とは関係ありません。建設業法第19条は金額にかかわらず書面の交付を求めています。
見積書に施主のサインをもらえば、契約書の代わりになりますか。
第19条第1項の事項がすべて書かれ、双方が署名または記名押印をして互いに交付していれば書面の要件を満たしえます。ただし見積書には支払の時期や紛争の解決方法などが書かれていないことが多く、そのままでは記載事項が足りない場合がほとんどです。
価格変動の条項に「契約後の増額は一切認めない」と書いてもよいですか。
国土交通省のガイドラインは、協議を前提としない「変更しない」「変更を認めない」という定めは第19条第1項に違反するとしています。協議して定める旨を書くのが基本です。

