作る義務がある会社と、対象になる運送
実運送体制管理簿を作るのは、真荷主から貨物の運送を引き受けた貨物自動車運送事業者(元請事業者)です(貨物自動車運送事業法第24条の5)。軽自動車で運ぶ貨物軽自動車運送事業者は除かれます(国土交通省のQ&A 問4-2。以下「問」はこのQ&Aの番号)。2026年4月1日からは、貨物利用運送事業者が元請になる場合も作成の義務がかかります(問1-2・問4-3)。
対象になるのは、真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物の運送について、その全部または一部を他の事業者に運んでもらったときです(問4-1・問4-4)。1.5トンという重さは、施行規則(第13条の13)で決まっています。重さは、実際に運ぶときではなく、真荷主から運送の依頼を受けた時点の重さで判断します。実際の重さが分からないときは、容積から換算した重さで判断してもかまわないとされています(問4-8)。
真荷主から運送を引き受けた元請の事業者でなければ、作る義務はありません。下請けとして受けた運送が対象の運送なら、元請へ情報を知らせる側になります。元請であっても、1回の運送依頼の重さが1.5トン未満なら対象外です。1.5トン以上でも、すべて自社で運んだなら作らなくてよく、災害その他緊急やむを得ない場合も対象外です。そのどれにも当たらなければ、実運送体制管理簿を作り、運送の完了から1年間、営業所に置きます。
| 場面 | 実運送体制管理簿 | 根拠 |
|---|---|---|
| 真荷主から1.5トン以上の運送を引き受け、一部でも他社に委託した | 作る | 問4-1・問4-4 |
| 引き受けた貨物を、すべて自社のトラックで運んだ | 作らなくてよい | 問4-4 |
| 1回の運送依頼の重さが1.5トン未満 | 対象外 | 問4-8 |
| 1回の依頼で1.5トン以上。配達先が複数で、それぞれは1.5トン未満(1つの運送契約) | 作る | 問4-8-2 |
| 基本契約の合計は1.5トン以上だが、1回ごとの依頼は1.5トン未満 | 対象外 | 問4-8-3 |
| 積合せ運送 | 1回の依頼の重さで判断 | 問4-6 |
| 災害その他緊急やむを得ない場合 | 対象外(単なるスポット輸送は当たらない) | 問4-12 |
記載事項は3つ
実運送体制管理簿に書くことは、次の3つです(問4-1)。国土交通省のリーフレットの作成イメージには、積込日・車番・ドライバー名の欄もありますが、必ず書く事項はこの3つです。
書き方の細かさに決まりはなく、どの運送の記録かが真荷主と元請の両方に分かればよいとされています。真荷主は管理簿の閲覧や写しを求めることができるので、真荷主が見て分かる書き方にしておくのが望ましい、とされています(問4-10)。
| 記載事項 | 中身 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| 実運送事業者の商号又は名称 | 実際にトラックで運んだ事業者 | 協力会社から通知された名称を書く |
| 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間 | 何を、どこからどこまで運んだか | 「東京~大阪」のような都道府県単位や、「雑貨」「食料品」のような書き方でもよい(問4-10) |
| 実運送事業者の請負階層 | 元請から数えて何次の請けか | 元請の委託先が「1次請け」、その委託先が「2次請け」(問4-9) |
保存期間・様式・電子での保存
作成と保存の決まりを表にまとめます。国が決めた様式は無く、必要な3つの事項が書かれていれば、いまお使いの配車表に列を足して管理簿として使うこともできます(問4-15)。国土交通省のリーフレットの作成イメージは、真荷主ごとに表を分け、積込日・運送区間・貨物の内容・実運送事業者・請負階層・車番・ドライバー名を並べています。
| 項目 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 保存の期間と場所 | 引き受けた貨物の運送が完了した日から1年間、営業所に置く | 問4-1 |
| 作る時期 | 期限の定めは無い。運送の完了後、遅れずに作るのが望ましい | 問4-14 |
| 様式 | 決まった様式は無い。必要な事項があれば既存の配車表も使える | 問4-15 |
| 紙か電子か | 電子データで作り、保存してもよい | 問4-16 |
| 国への提出 | 定期的な提出は不要。監査やトラック・物流Gメンの調査で求められたら出す | 問4-17 |
| 違反したとき | 罰則は無いが、行政処分等の対象になる可能性がある | 問4-18 |
実運送体制管理簿の見本(Excel・記入例つき)
真荷主ごとの表に、必ず書く3つの事項(実運送事業者の名称・貨物の内容と区間・請負階層)と、国のリーフレットの作成イメージにある積込日・車番・ドライバー名を並べました。保存期限の目安も計算します。
国が指定した様式ではありません。記入例は架空のものです。御社の運用に合わせて直してお使いください。
協力会社から情報を集める流れ(通知の義務)
元請が実際に運んだ会社を知るために、委託の連なりの中にいる事業者には、情報を知らせる義務があります(問4-5・問4-7)。元請は、委託するときに、その運送が実運送体制管理簿の対象であることを委託先へ確実に伝えるよう求められています。
通知が届かずに管理簿が作れなかったときは、まず通知を滞らせた事業者の責任とされます。それでも元請は、実運送事業者と請負階層の把握に取り組むよう求められています(問4-19)。
| だれが | だれへ | 知らせること |
|---|---|---|
| 元請事業者 | 委託先 | 元請事業者の連絡先・真荷主の商号又は名称・委託先の請負階層 |
| さらに委託する事業者 | その委託先 | 上と同じ3つ(受け取った情報を引き継ぐ) |
| 実際に運んだ事業者(実運送事業者) | 元請事業者 | 実運送事業者の商号又は名称・貨物の内容及び区間・請負階層 |
作り方の手順と記載例(配車と傭車の記録から)
系列などで取引の形が決まっていて、真荷主から引き受ける時点で実運送事業者まで分かっている場合は、運送ごとに記録しなくてもよいとされています(施行規則第13条の14、問4-11)。この場合も最初の運送は記録し、その記録から1年たったら、そのあと最初の運送を改めて記録します。委託先や実運送事業者が1社でも違う運送をしたときは、その運送を記録します(問4-11・問4-11-2)。
それ以外は、次の手順で運送ごとに記録します。この節の表は、真荷主1社分の記載例です(社名は架空)。国土交通省のリーフレットの作成イメージに倣い、必ず書く3つの事項に積込日を足しています。2月2日の例のように、一部の区間を元請が自社で運んだときは、リーフレットの例ではその区間も同じ表に並べています。すべて自社で運んだ運送は、管理簿の対象になりません(問4-4)。
- 受注のときに、依頼主が真荷主かどうかと、1回の運送依頼の重さが1.5トン以上かを確かめます。
- 協力会社に委託するときは、元請の連絡先・真荷主の名称・委託先の請負階層を伝え、管理簿の対象の運送であることも伝えます。
- 実際に運んだ事業者から、名称・貨物の内容と区間・請負階層の通知を受けます。
- 配車表や傭車の記録に3つの事項をそろえ、真荷主ごとに記録します。運送が終わったら、遅れずに作ります。
- 運送が完了した日から1年間、営業所で見られる状態で保存します。電子データでもかまいません。
| 積込日 | 運送区間 | 貨物の内容 | 実運送事業者の商号又は名称 | 請負階層 |
|---|---|---|---|---|
| 2月1日 | 埼玉県~大阪府 | 食料品 | A運輸 | 1次請け |
| 2月2日 | 埼玉県~大阪府(自社の営業所まで) | 飲料 | 自社(元請) | 元請 |
| 2月2日 | 大阪府内(営業所~小売店) | 飲料 | B運送 | 2次請け |
荷主や国から求められたときの出し方
真荷主ごとに分けて記録しておくと、求められたときにそのまま出せます。
- 真荷主は、元請の業務取扱時間内はいつでも、実運送体制管理簿の閲覧や謄写(写しを取ること)を求めることができます(法第24条の5第5項、問4-17)。
- 電子データで作っている場合は、記録した事項を紙面か画面に表示したものを見てもらいます(法第24条の5第5項第2号、施行規則第13条の15)。
- 国へ定期的に出す必要はありません。監査やトラック・物流Gメンの調査で求められたときに出します(問4-17)。
用語
この記事で使っている言葉の意味です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 真荷主 | 自らの事業に関して、貨物自動車運送事業者や貨物利用運送事業者と運送契約を結んで貨物の運送を委託する者で、そのどちらでもないもの。一般の消費者は含まれません(問1-3)。 |
| 元請事業者 | 真荷主から運送を引き受け、実運送体制管理簿を作る事業者(問1-3・問4-2)。 |
| 実運送事業者 | 実運送(事業用自動車を使って行う貨物の運送)を行う事業者。委託の連なりの先で、実際にトラックで貨物を運ぶ事業者です(法第24条の5第1項第1号)。 |
| 請負階層 | 真荷主と元請の契約の後に結ばれた運送契約の数で数える、何次の請けかの段階(問4-9)。 |
| 利用運送 | 引き受けた貨物の運送に、他の事業者が行う運送を利用すること。 |
よくある質問
2次請け・3次請けの会社の名前も、すべて書く必要がありますか。
必ず書く事項は、実際に運んだ事業者の名称と、その請負階層(「3次請け」など)です(問4-1)。間に入っただけの事業者の名称は、必ず書く事項には入っていません。間に入る事業者は、元請の情報を次の委託先へ引き継いで知らせる役目を負います(問4-7)。なお2026年4月1日からは、元請事業者に、2次請けの事業者がさらに再委託する(3次請け以降になる)ことを抑えるよう努めることが求められています(問1-1・問3-6)。
スポットで傭車を頼んだ運送も対象ですか。
対象です。作らなくてよいのは「災害その他緊急やむを得ない場合」で、単なるスポット輸送はこれに当たらないとされています(問4-12)。
貨物利用運送事業者が元請のときも作りますか。
2026年4月1日から、貨物利用運送事業者が元請になる場合も作成の義務がかかります。施行日以降に委託先へ運送を依頼したものから対象です(問4-3・問4-13)。
マッチングサービスを使ったときの請負階層は。
マッチングサービスの事業者が第一種貨物利用運送事業者であれば、運送契約の当事者になるので請負階層に数えます。そうでなければ数えません(問4-9-2)。

