定期報告の義務がかかる会社と、根拠の条文
定期報告の義務は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)第20条にあります。条文は「賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない」というもので、頻度と記載事項は施行規則第40条が定めています。
ここでいう賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者です(法第2条第3項)。管理する賃貸住宅が200戸以上の会社は登録が必要で(法第3条第1項、施行規則第3条)、国土交通省の解釈・運用の考え方は、200戸未満でも登録を受けた場合は他の登録業者と同様に法の規制に服するとしています。管理業務とは、オーナーから委託を受けて行う賃貸住宅の維持保全(点検・清掃・修繕など)と、それと併せて行う家賃・敷金・共益費などの金銭の管理を指します(法第2条第2項)。
報告の相手は、管理受託契約を結んだオーナーです。「法第20条の規定による委託者への報告に関する事項」は、契約を結ぶ前の重要事項説明(施行規則第31条第8号)と契約時の書面(施行規則第35条第2項第5号)の記載事項にもなっています。国土交通省の解釈・運用の考え方は、重要事項説明では報告する内容とその頻度を記載して説明するとしています。国土交通省の令和7年度の立入検査では、契約時の書面にこの「法第20条の規定による委託者への報告に関する事項」が書かれていない例が是正指導の対象として挙げられています。
国土交通大臣の登録を受けた賃貸住宅管理業者でなければ、法第20条の定期報告の義務はかかりません。ただし管理する賃貸住宅が200戸以上なら、まず登録が必要です。200戸未満でも登録を受けていれば義務がかかります。登録業者でも、法の施行(2021年6月15日)より前に結び、施行後に一度も更新していない管理受託契約には第20条は適用されません。その場合も、更新前からできるだけ早く報告するのが望ましいとされています。どちらにも当たらなければ、契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとと契約期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を交付して説明します。
報告の頻度は「1年を超えない期間ごと」と「契約満了後遅滞なく」
施行規則第40条第1項は、報告の時期を「管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」としています。年に1回が最低限で、国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、報告する事項によってはそれ以上の頻度で報告することが望ましいとしています。
契約を更新するときの扱いも示されています。契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとの報告がきちんと行われている間に、契約期間の満了に伴って更新した場合は、その更新時の「満了に伴う報告」は不要として差し支えないとされています。一方、法の施行(2021年6月15日)より前に結んだ契約には第20条は適用されませんが(附則第3条)、施行後に更新されたら、形式的な変更であっても本規定に基づく報告を行うべきとされています。更新される前でも、可能な限り早期に報告することが望ましいとされています。
| 場面 | 報告の時期 | 補足 |
|---|---|---|
| 契約期間中 | 契約を結んだ日から1年を超えない期間ごと | 最低限の頻度。事項によってはそれ以上が望ましい |
| 契約期間の満了 | 満了後遅滞なく | 1年ごとの報告が行われている間の更新なら、満了に伴う報告は不要として差し支えない |
| 法施行(2021年6月15日)前からの契約 | 施行後に更新されたら、更新後は報告する | 更新前でも可能な限り早期の報告が望ましい |
管理業務報告書の記載事項3つと、苦情の書き方
管理業務報告書に書く事項は、施行規則第40条第1項の3つです。国土交通省の考え方では、これ以外の事項もオーナーの求めに応じて報告することが望ましいとされています。
管理業務の実施状況は、法律上の管理業務(維持保全と金銭の管理)に限らず、管理受託契約で委託を受けた業務の全てについて報告することが望ましいとされています。入居者募集や更新の手続きなどを一緒に受託しているなら、それも載せておくと説明しやすくなります。
苦情は、発生した日時、申し出た人の属性、苦情の内容、対応の状況などを、把握できる限り記録して報告する必要があります。単純な問い合わせは記録と報告の義務はありませんが、苦情を伴う問い合わせは、対処の状況も含めて記録し、報告します。電話で受けた入居者の連絡を、問い合わせか苦情かで分けて残しておくことが、報告書を作るときの手間を左右します。
| 記載事項(規則第40条第1項) | 書く内容の例 |
|---|---|
| 第1号報告の対象となる期間 | ○年○月○日から○年○月○日まで。前回の報告の終わりと切れ目なくつなげる |
| 第2号管理業務の実施状況 | 点検・清掃・修繕の実施日と内容、家賃・敷金・共益費の収受と送金の状況、契約で受託したその他の業務 |
| 第3号入居者からの苦情の発生状況と対応状況 | 発生日時、申出者の属性(入居者・近隣など)、内容、対応の状況(完了・対応中と、その内容) |
交付と説明のしかた(紙・電子)
管理業務報告書は「交付して説明」します。説明の方法は問われませんが、オーナーと方法を協議したうえで、双方向でやりとりできる環境を整え、オーナーが内容を理解したことを確認することが求められています。郵送で送りっぱなしにせず、電話やオンラインで要点を伝え、確認した日と方法を記録に残すのが確実です。
紙の代わりに電子で渡す場合は、施行規則第40条第2項から第8項の手続きに従います。オーナーの承諾が前提で、承諾を得る前に、使う方法(電子メール、ウェブからのダウンロード、記録媒体など)とファイルの形式を示す必要があります。国土交通省の解釈・運用の考え方は、重要事項説明書の電子提供と同じ扱いとし、承諾が記録に残る方法で承諾を得ること、出力して書面にでき改変が行われていないか確認できることを求めています。電子で渡したあとも、データを適切に保存するよう努めることとされています。
- 使う方法(電子メール・ウェブでの閲覧とダウンロード・記録媒体)とファイルの形式(例:PDF)をオーナーに示す
- オーナーから、書面または電子の方法で承諾をもらい、承諾の記録を残す
- 出力して紙にでき、改変されていないか確かめられる形式(例:PDF)で報告書を提供する。ウェブで閲覧させる方法では、ファイルを置いたことをオーナーに通知する(閲覧を確認できた場合を除く)
- 電話やオンラインなど双方向の方法で説明し、オーナーが内容を理解したことを確認して記録する
- オーナーから「電子では受け取らない」と申し出があったら、以後は電子で提供しない(改めて承諾を得た場合を除く)
立入検査で指摘が多い点
国土交通省は毎年、賃貸住宅管理業者などへの立入検査の結果を公表しています。定期報告(法第20条関係)の是正指導は、令和6年度に20件、令和7年度に17件ありました。指摘の例は次のとおりです。
特に注意したいのは、苦情や修繕がなかったオーナーへの報告を省いてしまう例です。報告する出来事がない期間でも、対象期間と「実施した業務」「苦情なし」を書いた報告書を作り、交付して説明します。
- 定期報告を実施していない
- 報告事項(苦情・修繕など)が無いオーナーへの報告を省略し、報告書の一部を作っていない
- 報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況の記載が不足している
- オーナーが報告書の内容を理解したことの確認が足りない
- 管理受託契約の書面に、法第20条の報告に関する事項が書かれていない(法第14条関係の指摘)
よくある質問
管理戸数が200戸未満でも定期報告は必要ですか。
定期報告の義務がかかるのは、国土交通大臣の登録を受けた賃貸住宅管理業者です。200戸未満で登録を受けていない会社には法第20条の義務はかかりませんが、国土交通省の解釈・運用の考え方では、200戸未満でも登録を受けていれば他の登録業者と同様に法の規制に服するとされています。管理戸数が一時的にでも200戸以上になる見込みがあれば、登録を受けることが適当ともされています。
苦情も修繕もなかったオーナーには、報告しなくてよいですか。
報告は必要です。国土交通省の令和7年度の立入検査では、報告事項の無いオーナーへの報告を省略した例が是正指導の対象になっています。対象期間と実施した業務、苦情がなかったことを書いて交付し、説明します。
管理業務報告書をメールで送るだけでよいですか。
電子で渡すにはオーナーの承諾が必要で、承諾の前に方法とファイルの形式を示します。送ったあとも説明は必要で、双方向でやりとりできる方法で、オーナーが内容を理解したことを確認することが求められています。
年1回より多く報告してもよいですか。
かまいません。施行規則は「1年を超えない期間ごと」としており、国土交通省の考え方では、報告する事項によってはそれ以上の頻度での報告が望ましいとされています。たとえば、毎月の送金明細とあわせて修繕や苦情の状況を伝え、年1回の管理業務報告書でまとめる運用が考えられます。その場合も、年1回の報告書には規則の3つの記載事項を全部書き、交付して説明します。

